最近よく考えるのはスマートフォン(以下、スマホ)や、ソーシャルネットワークシステム(以下、SNS)との向き合い方だ。スマホを購入し、その便利な機能の恩恵にあってから早くも7年程経つ。購入した当初は最新型だったiPhone 5sも、今の位置付けとしてはもうかなりの旧型だ。まだ現役で稼働して貰っているが、完全に5G時代がやって来る頃にはどうやら非対応になるのは免れないらしい。ユーザーに電波の選択肢があっても良さそうなのだが。地上デジタル放送への切り替えの時と何だか似ている。
スマホの画面を見ていると、時折目がチカチカするような事が多くなった。ブルーライトのせいか、小さな文字をスクロールで追うせいか、単純に見過ぎか、まさかの老眼か。長文の記事を読む時になると、次第に頭痛まで併発してくるので困ったものである。メモリー数が大きいデータをやり取りする面ではスマホは大分重宝しているが、それ以外は正直、携帯電話でも機能的に充分足りている気がするのが個人的な考えだ。電話とメールが使えれば、とりあえず連絡関係は何とかなるだろうし。
インターネットが普及、進歩し、多大な情報を誰でも取り扱えるようになった。ニュース、音楽、動画、ゲーム、小説、漫画、はたまたオンライン会議まで多岐に渡る。その中でもSNSは現代のコミュニティーカルチャーにおいて、象徴的な存在になった。その魅力には確たるものが存在し、自分も様々なSNSを試した経緯があるので、面白味もそれなりに知っているつもりである。しかし、このシステムが大衆的に、且つルーティーンになっていくに連れ、違和感を持つ事が多くなった。
思った事を安易に、且つ気軽に投稿出来るのはSNSのメリットだ。しかし、公の場であるSNSに投稿している限り、それは独り言ではない。画面の先には無数の人達がいる。その人達の前で発言している事実があるのに、それを意識する事無く、画面の前での独り言に変わってしまっている事が多いように感じる。
全く知らない誰かと誰かの会話が簡単に覗けてしまうのもSNSの特徴である(鍵アカウントの場合は別)。全く知らない誰かの家族、友人、恋人等の顔を、SNSにアップロードされた写真や動画で簡単に見れてしまう。データを投稿する際に、自己アピールとプライバシー保護の境界線がそこには存在するが、その境界線を考慮した上での投稿はどの位あるのだろうか。有耶無耶になっていないだろうか。また、閲覧者が行う拡散アクションで一体どこまでそのデータが広がるのか、その拡散力は計り知れない(ところで「いいね」による拡散機能が必要なのか、甚だ疑問である)。
SNSが主流となる以前は、ブログやBBSがインターネットを使用した自己主張や意見交換の場だった。ブログはその大体に主題があり(後付けになる場合もある)、それに沿って文章を構成したり、修正して投稿する。SNSはその手軽さゆえか、言葉を伝えるというよりは、言葉を唯々垂れ流しているように見える。思った事をすぐ投稿出来る分、言葉を選択し、構成する過程が大分軽薄になったのではないだろうか。誤字脱字もSNSで頻繁に見かけるのは、投稿に対する気持ちのスピードが勝り、推敲に掛ける時間が無いからなのだと思う。
BBSも公の意見交換の場として以前はよく使用されていた。SNSとは異なり、個々のBBSにアクセスしなければ人と人との新たな関係が構築される事は無いし、使用者同士、お互い敬意を表した言葉のやり取りが出来ていたと思う。見ず知らずの者同士がどこからともなくわんさか群がって、叩き合うような無法地帯では無かった。SNSでは心無い言葉による誹謗中傷が増え、実質的に殺人も起こっている。人にとって有益になる筈の物が、人の捻れた感情によって有害な物に変わってしまっている。技術の進歩に人間のモラルが追い付いていないのだろう。意見に対する反論を述べるにせよ、他者の意見を憶測で認識し、軽率に反論が行われているケースが多く見受けられる。反論をしてはいけない訳ではない。しかし、そこには意見に対する熱意と相手への敬意が存在するべきだ。単なる揚げ足取りは、いい加減滑稽である。
手元にあるスマホを使えば、何でも簡単に手に入れられるようになり、欲しい物を探す手間も省かれた。だが、その手間が煩わしい物だったかと問われればそうではない。欲しい物を手に入れる為に、時間が掛かろうが、店を駆け巡るのも苦では無かった。例え欲しい物が見つからずとも、ふとした新たな出会いがあったりした。便利になる事自体は悪い物ではない。しかし、その恩恵に慣れ過ぎ、手間を愛でる時間を失いつつあるのが今の時代なのだと思う。
恩恵と喪失が交錯するこの社会を生きていくには、それに気付く為の一手が必要なのかも知れない。デマ等に流されず適切に情報を収集したり、意味を持つ言葉を紡いで発する。スマホやSNSを有効利用する為にも、常に人と向き合っている事を念頭に置き、スマホやSNSと丁度良い距離感を保ちながら付き合っていく事が重要だと思う。
＝渡部アルヲ＝